※2021年に書いた記事を少し手直しして載せています。
前回→WEB連載の地獄と家出の夜|ぼくとおばけとクソサイト②
続き)
それから1巻の発売に際して、売り込みをめちゃくちゃ頑張ろう、と決めました。
プルーフ本と書店まわり
よく書店などにある1話まるまる読める冊子(プルーフ本というらしい)を刷って、全国の書店に手紙付きで配ることにしました。これは編集部が費用を持ってくれたら最上ですが、僕が同人の印刷所に頼んで自費出版で出して配ってもいい。
それから書店まわりをしよう。Twitterで漫画家の書店まわりを推奨する記事を見ました。書店員さんとしては、「作家さんのあいさつ回りは歓迎する、あいさつ回りしてくれた作家さんの作品はプッシュしてあげたくなる」といった内容でした。
もちろん嫌だと思う書店さんもいるだろうけど、ポジティブな意見もちゃんとあるという証左です。
ホリエモンも「本が売れないとか言ってる人って、書店まわりとか地道なことをしないんだよね、俺めちゃめちゃするよ」みたいなことをどっかで言っていたのを覚えています。
(みつけた。改めてこの動画を見て悲しくなりました…)
「絶対に売り込んでやる」と思いました。
担当の感触も良かった。「プルーフ本、良いですね」「書店まわり、作家本人がそこまで売ろうとしてくれてありがとうございます」みたいな感じでした。
突然のNG
しかししばらく経って、突然ラインがきました。
「プルーフ本、編集部で出すことはできません。屋乃さんが自費で出すのも禁止です」
「それから書店まわりもNGです」
頭が真っ白になりました。
わけがわからない。理由を聞くと
「忙しい書店員さんの時間を奪うわけにはいかないから」だそうです。
「書店さんからサインなどを頼まれたときは受けてください」
なんだそれ?
僕が暇だとでも思っているのか?
毎日16時間くらい原稿を描いています。徹夜する日だってあります。
それは僕の選択だからそこに文句はありません。書店員さんが忙しいのはわかります。
でも、貶めるわけじゃないけど、今の僕より忙しいのか?本当に?向こう主導じゃないと動けないほどに?
「今って昔みたいに、何もしなくても漫画が売れた時代じゃないんですよ。ただでさえ閲覧数の少ないサイトで、僕みたいに知名度がない作家が売れようと思ったら地道なことするしかないじゃないですか。これって、そちらの編集部がトラブル避けたいだけですよね?」
と言ったら担当は何も言えなかったようでした。ただ、「そのとおりだと思います」とだけ言われました。
担当が悪いわけではありません。編集部の決定に平社員が従わないわけにはいきません。
糸が切れた
「重版すれば連載継続」と聞いていました。とにかく重版すればいいわけです。他の施策を考えよう。
僕「わかりました、何部売れれば重版するかだけ教えて下さい」
担当「それは僕にもわかりません」
フッと、糸が切れる音がしました。
もういいや、だめだこれ。
まだ1巻がこれから出る、というタイミングだけど、そこから「打ち切り」を視野に入れて描くことにしました。できるだけアシスタントを使わずに(もともとあんまり使っていなかったけど、お金と経験が必要そうな漫画家仲間の友達に仕事を振ったりしていた)、ひとりでやることにしました。そのとき貯めた金はTwitter運用に大いに役立ちました。
※ちなみに部数とか重版の基準とかは部決会議とかで決められるらしいので、一介のヒラ編集者が知らないでも本人の職能として瑕疵があるわけではないです。風通しがすこぶる悪い編集部だな、と思いましたけど。
ネーム地獄のあとがこれ
1年に及ぶネーム地獄。ゴールの見えない賽の河原。
そういえば「実際に連載になったらこの程度の直しは普通にあります」と言われました。
「そんなわけないだろ…」と思いましたが、いざ連載になったらほぼ一発かせいぜい1〜2度の直しで載りました。やっぱりそんなわけありませんでした。
始まるとなったら準備期間ほぼゼロで始まるし。しかもタイミングがKADOKAWAの方の短期連載とかさなりました。
怒涛の量をこなしました。この連載の行き着く先が明るいものだと信じていたからです。
その結果がこれだ。
作家を疲弊させてなんの意味があるんだろう?
断っておくと当時の担当には感謝しているし尊敬しています。
編集部はクソだと思いますけど。
連載終了時に編集長から「主人公も成長したし君(屋乃)も成長した。よくがんばった」みたいなコメントをいただきましたが、「俺の成長も主人公の成長もどうでもいいからまずてめーのとこのクソ雑誌なんとかしろ!」と思いました。
流石に言っていません。言っていないと思う。言ったかな?忘れました。
案の定、1巻は売れませんでした。
もういい。ちゃんと読んでくれている読者と主人公には申し訳ないけど、早く終わらせたくて仕方ありませんでした。
打ち切りとTwitter開始
打ち切りが決まったタイミングは覚えていません。ショックはゼロでした。
それくらい、1巻の発売時点の妨害(あえて妨害と呼ばせていただく)の衝撃が大きかった。あの時点でショックは受け終わっていました。
Twitterがやりたい。はやく終わらないかとすら思っていました。
連載終了したと同時にTwitterの更新を始めました。その時点でフォロワー2000人前後。
それも連載で増えたフォロワーさんは少なく、合間を縫って更新していた4p漫画で増えたものでした。
といってもまったくバズっていないので本当にちょっとずつ増えていったもの。その頃から応援してくれていたひと、ありがとう。
一番最初に更新したのが「幼い頃に使えた魔法と、不思議な手の像」という話。どの層に向けて描いたのかわからない。今見るのも恥ずかしいほどシッチャカメッチャカです。
僕はよくある4pでまとめたいわゆる「尊い」漫画が描けなかったので、30p前後の読み切り尺で考えて、それを4pずつに分割してアップする、という感じでやっていました。
あ、急に宣伝だけど、この1年半を集大成したとも言える短編集が出ます。「幼い頃に〜」も入っています。僕がいかにTwitter漫画に向いていないところから、市場に適応してきたかがわかると思います。
短編集「スレチガイも恋のうち」

すがすがしい。なんにも縛るものがない。まあおそらく率先して荒らしていたと思われるやつから中傷メールが来るようになったし、おばけもまだ成仏していなかったのでそれなりにしんどかったですが、とにかくTwitterが楽しかった。
※読者に荒らししかいなかったと表記しましたが、もちろんちゃんと読んでくれている人はいたと思います。そういうまともな人は荒れた掲示板なんか見ないで去ったでしょうし、中には応援コメントをくれる人も少ないがいました。そういう人には本当に感謝しています。ありがとう。
ただなんというか、コメント欄がほとんどが荒らしで埋め尽くされていて、ポジティブコメントは埋没していました。僕の心境としては「荒らししか読んでないじゃん…」みたいなしんどさだった、というかんじです。
そんなこんなで1年半経ったらフォロワーさんが10万にまで達しました。
あなたたちに届けたかった。
集まってくれてありがとう。
でもこれロッキーの撮影じゃないのよ〜!
(終わり
でもちょっと続く


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